Album Story 5 of 6

「いい子でなくても良い。素晴らしい躍りでなくてもいい。見てくれる人が楽しんでくれて、自分も楽しい。それでいいんじゃないかな。」と彼は言う。

良い子でなければ、よい成績でなければ、と日々頑張ってきたイザベルだったが、そんな生き方もいいなと思えてきた。しかし、なかなか彼のようには生きられない。
自由になりたい!自尊心が強い自分を恥ずかしく思うと同時に、少年をとてもうらやましく思った。

路上のパフォーマンスを見ていたある紳士に誘われ、2人は大きなステージに出演することになった。
これまでは違い、蝋燭の照らす薄らぼんやりした明かりだが、観客の視線はっきり見える。「期待に答えなければ」 体が動かない。最初の一歩を踏み出すことができなかった。

しかしその時、少年の言葉が頭をよぎった。「いい子でなくても良い。素晴らしい躍りでなくてもいい・・・」
私は、ただ音楽と自分の踊りに身を委ねるだけ。それだけでいい。

少年のフィドルに合わせて、イザベルは踊り出した。 何もかも忘れ、踊った。なぜか客の反応も気にならなかった。ただただ無心に踊った。

彼女は初めて一瞬自由を味わった。

鳴り響く歓声と拍手の音に我に返った。拍手は鳴り止まなかった。
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