Album Story 3 of 6

旅の途中、父の訃報(ふほう)が届いた。大好きな父だった。急遽旅を止め、あらゆる想いを胸に抱きながら家へと帰った。
家に帰り着いたのは何日も後だった。既に葬儀も終わり、父のパブは閉店としていた。あれほど人で賑わっていた店が、信じられなくらい静まり返っていた。
パブで働いていた踊り子のアンジェリカはクビになり、もう居なくなっていた。

アンジェリカはイザベルにとって姉のような存在だった。
そして幼いイザベルに踊りを教えた人物でもあった。アンジェリカはイザベルの踊りの才能を見抜き、熱心に教えた。しかし、この村のでは踊り子の地位は低い。
母は、決してイザベルがダンサーなどになるということを許さなかったし、イザベルも、地位の低いダンサーになるつもりは無かった。

アンジェリカは心優しい人間で、村の人々の相談相手でもあり、踊りで人々を励まし、安らぎを与えた。
彼女の踊りは、華麗かつ優雅で、かつて大劇場を沸かせた有名なダンサーではないかという噂もあった。

しかし、女手ひとつで娘を育てていた彼女は、一部の"自称善良な人々"から忌み嫌われていた。 そして、イザベルの父が亡くなると、彼女はすぐに村から追い出されてしまった。
それを知ったイザベルは、ショックを受けた。

父や彼女が居なくなった今も、閉鎖されたパブの入り口に佇む人の姿がある。イザベル自身の心にもぽっかり大きな穴が開いてしまった。

そして、母一人に見送られながら、また彼女は旅に出た。今回はもうお金の余裕も無い長い旅となった。
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